2016年5月2日

見所との深いお付き合い

私が子供の頃は能楽堂の見所(観客席)のお客様は、喜多流を習っている方がほとんどでした。しかももう何十年とお稽古を続けてこられてきた方も少なくありませんでした。そうした方々は自ずと自分の好きな曲目・演者があって、或る意味自分自身の能への価値観をしっかりお持ちだったように思います。能楽師の方もそうした方々といわば人数は多くはないけれど、深いお付き合いをさせていただいていたと思います。

現在は勿論そういう方もいらっしゃいますが、純粋に能を観覧することを楽しまれている方が増えたように思います。お能を数ある舞台芸術の一つとして、流儀や演者にこだわらない見方をされている方が増えたと思います。そんな中、かつてのいわば見所との深いお付き合いとまでは行かないまでも、私が能楽師として考えていること、目指しているもの、或いは能の魅力、そして情報をこの場でざっくばらんに発していきたいと思っております。宜しくお願い致します。

友枝 真也