お能の質問箱

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坂中の住人 さん (神奈川県 女性 50代)

2月に「白田村」を拝見しました。
とても素敵でした。
別の方のブログを見て
「田村」の小書き:特別なバージョンだと初めて知りました。
喜多流はお衣裳が白いから「白田村」というのですか?
どのような経緯で「白田村」ができたのですか?
ご教示よろしくおねがいいたします。

ご質問、ありがとうございます。

能の曲目の演出は、様々ございますが、小書というのが一つの演出方法と言えます。字の通り曲目の斜め下に小さく書く事によって、通常の曲の進め方と違う演出になるという事を表しています。お能の見巧者の方は、それを見てその演目のその日の流れを把握してお楽しみ頂く事になると思います。

しかしながら、小書と言うのは通常の舞い方に一工夫されている事が多いので、より具体的で臨場感が増します。その為、初めてご覧になる方にも小書の意味がわからなくても、お楽しみ頂けると思っております。

お尋ねの「白田村」は小書と言うより、演目の文字の上に同じ大きさで「白」という表記がされています。この表記の仕方は喜多流独特で他には「是界」という曲に「白」という文字を乗せて「白是界」という演出がございます。

小書と同様に、通常とは異なる演出になる事を番組上でお知らせしておりますが、小書より強い意識で演出の変更を主張していると考えいただいて結構だと思います。

「田村」の場合ですが、「白田村」になると後シテの装束が大幅に変更されて全身が白を基調とした扮装になり、面も平太という面から天神という面に変わります。

これは「白」という文字が神格化をかなり強く意識しているからです。曲の進め方も通常と変わり、後シテの坂上田村丸の亡霊の舞い方に緩急が加わり、神の存在に近く感じられる様になっております。

前述の通り演出変更の強い意識は、それなりの技術と経験を必要とする為、安易に公演に出す事もございません。我々の流儀でも大切に扱っておりますので、若いうちに舞う事を許される演出ではないのです。

体力的にも要求される事も多く、年功を積み、尚且つ肉体的な強さ求められる演出とお考えください。

友枝雄人

2017年3月11日更新