開催終了 2016年7月2日(土) 午後2時開演(午後1時30分開場) セルリアンタワー能楽堂
喜多流 定期能7月
能「藤戸」友枝昭世
藤戸(ふじと)
源平の合戦。源氏の武将佐々木盛綱は、藤戸(現在の岡山県倉敷市)の先陣の功によって賜った備前の児島に新たな領主として入島し、訴え事のある者は遠慮なく申し出るようにと触れを出します。すると年配の女がやってきて、盛綱に我が子を殺された恨みを述べます。はじめは否定していた盛綱も隠しきれなくなり、浅瀬を教えてくれた若い漁師を殺して海に沈めたと告白します。真相を知った母親は慟哭し、盛綱に激しく詰め寄りますが、盛綱は弔いを約束し母親を私宅へ帰します。〈中入〉盛綱が早速追善の法要を行なっていると、蒼ざめ痩せ衰えた漁師の亡霊が現れ、氷のような刃で胸を刺し通された苦痛を訴え、恨みを晴らそうと襲い掛かりますが、やがて弔いを受けて成仏します。
現在の児島は本州と陸続きの半島となっており、昔は浅瀬が続いていたことが想像できます。『平家物語』ではこの事件を盛綱の功績を讃える武勇伝として扱っていますが、また対極には手柄の為に殺された漁師、その家族がおり、弔って成仏しても死んだ者は帰らないという悲しみをこの作品は表しています。