鈴鹿山 さん (大阪府大阪市 女性 20代前半)
お能の所作、型についてふと気になった事がありましたので、質問させていただきました。
お能の型には様々なものがあり、シオリなど直接的な感情表現につながるものもあれば、中には、意味は伴わず一連の動きの中で取り入れられているものもある、と伺いました。
そこで、気になったのですが、時折、シテが頭(カシラ?)を掴むような型をされているのを観ます。(船弁慶の後シテ等) あの型には名称のようなものがあるのか、そして、何か意味が込められているのか、知りたく、ご質問させていただきました。
どうぞよろしくお願い致します。
ご質問ありがとうございます。
今回のお尋ねを頂き、舞には型と所作の二種類があると思いました。
型は、いわゆる抽象的な身体の動き、それに対して所作は具体的な意味を持った身体の表現となるのではないでしょうか。
ご質問の頭の前髪を掴む所作ですが、単純に遠くを見る、と言う所作です。頭の前髪が少し邪魔で見えにくいので、それを掴み上げて視界を広げる、と言う事です。
頭を着ける時には、前髪をうまく垂らして面の、表情を少しぼやかす事をします。その方がシテの感情を表現するのに効果的だからです。それ故、頭の前髪を掴んで遠くを見る型は、面の表現をハッキリと見せるという事になります。
遠くを見ると言う所作の向こう側に、その場面で見る事によるシテの感情が見え隠れする瞬間です。
能の舞、身体表現は8割以上が抽象的な動きです。少ない所作でシテの思いを伝えて、その後の抽象的な型に余韻としてその思いをさらに深くする、言うは易し、で我々の課題はまだまだ続きます。
2021年1月25日更新