2017年5月18日

小袖曽我・夜討曽我を終えて

先日、セルリアンタワー能楽堂にて「仇討の光と影」の最初の演目を無事に公演させて頂きました。

今回は、曽我物語に由来した演目を時系列に並べるという企画でした。実は、以前より小袖曽我、夜討曽我、禅師曽我の三曲を順番に並べ、役者もそのまま平行移動して演ずると面白いのでは、と考えておりました。それぞれ三曲の作者はよくわかりませんが、謡本を読めば読むほど繋がりを意識して作られたような気がしておりました。唯、今回の企画では仇討が大きなテーマでしたので、夜討曽我で1日の公演が終了しないと、主題がぶれてしまいます。そこで、本当に謡本を時系列に並べて、夜討曽我の前半の団三郎と鬼王と曽我兄弟の別離の場面の後に、そのまま禅師曽我の前半、団三郎兄弟が曽我兄弟の母親に形見を届けるシーンを続ける様に演出を加えました。所謂、通し狂言としてその日1日の公演をお楽しみ頂き、普段の能楽のシテ中心の演出による舞台の進み方とは、一味違う流れを観て頂こうと思いました。

謡本を並べ直して読んでみると、お能の曽我物は仇討自体が大きな主題の様に見えながら、実はその周囲の人々のそれぞれの思い、特に父の仇は討つが育てた自分への思いは如何なるものか、と自問自答する母親の思いが浮き彫りになって来ました。その母親に兄弟の形見を届ける家来の団三郎、鬼王兄弟の思いもまた、複雑です。

登場する人物それぞれの思いを描ける様になったのでは、と思い公演に踏み切りました。しかしながら、本番は一度のみで普段の能舞台とは異なる演目の出し方に違和感がないかと、当日を終えるまで自信がもてなかったことも正直な所です。

公演を終えて、おかげさまで各方面から好意的なご意見を頂いておりますが、演じてみて「こうすれば良かった、あそこは省けば良かった」という点も出て来ました。通常の舞台とは異なる準備と稽古で苦労も多い事もありましたが、とても良い経験をさせて頂き、セルリアンタワー能楽堂のスタッフの皆様には、感謝申し上げます。また、1日の通した長い舞台を勤めて下さった囃子方や各出演者の皆様にもこの場を借りて御礼申し上げます。

次回7月28日の公演は、仇討の光の部分、望月です。曽我物とは全く異なる敵討です。これも是非お楽しみくださいませ。

 

友枝 雄人