2019年10月20日

ろうそく能「鵺」

いよいよ来週の金曜日、蝋燭能の「鵺」の公演が近づいて参りました。
「退治する武者」というサブタイトルのもと、「頼政」と「鵺」の二曲を選曲させていただきました。「頼政」は、老武者のシテである為、あまり若い頃から稽古する演目ではありません。逆に「鵺」は動きも激しく強い演目なので、若い頃から稽古させられ、喜多流の身体の使い方を徹底的に叩き込まれる曲目です。修行過程では二演目は対照的ですが、公演舞台の演目となるとその扱いは、全く別になります。20代の頃に受けた父の稽古の行き方のまま40代の時に稽古を受け、コテンパンに叱られた事があります。若さに任せた舞い方を戒めると同時にその時分の初心というものが必要だと云う事なのでしょう。この度の「鵺」は5度目となりますが、その都度の初心に至り勤めたいと思っております。
また今回は、熊本にある祖父の叔父にあたる友枝敏樹が打った面を前シテに使わさせていただきます。面の袋には「平太」と書いてあり、「田村」などの強い修羅物に使う面ですが、面の作りはむしろ「筋怪士」に似ているところもあり、前シテの怪しい舟人にふさわしいと思っております。もとより手慰みに敏樹叔父が打った面であり(敏樹が面を打っていた事などは、祖父から聞いた事もありませんでしたので)、野卑な造作でもありますが、むしろそこが蝋燭の灯りに面白い効果が出るのではないかと考えております。いずれにせよ面が生きるも死ぬも、演じ手の身体です。50代になって未だにその「鵺」かと敏樹に言われぬように精々勤めさせていただきたいと思っております。
是非お運びくださいませ。

 

 

 

 

 

 

 

https://www.ceruleantower-noh.com/lineup/2019/20191025.html

友枝雄人