お能の質問箱

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おっち さん (東京都 20代前半 女性)

研究の過程で能について勉強しています。
真の序の舞と序の舞を聴き比べたとき序の舞の方が幾分かゆっくりとしているように感じるのですが確認しようにも譜面が読めません。2つの舞のテンポに違いはあるのでしょうか。また、なぜ「真の」序の舞なのですか?

ご質問、ありがとうございます。

序の舞と、真の序の舞の違いですが、形式的には真の序の舞には必ず太鼓が入るという事です。
舞の内容の違いとしては、序の舞はこの世に思いを残している霊魂の追憶の舞、または草木の精の人間と同様な心情を持った舞、生きている生身の女性の白拍子の舞などになります。
それに対して、太鼓が必ず入る真の序の舞は、神の舞になります。真という文字がつくことにより、いっそう神格化されています。
舞のテンポ、という意識は離れた方が良いかと考えます。先ず、その意識はすでに西洋音楽の流れであり、指揮者の存在しない能は舞台、舞台の本番によりその音楽性は常に異なるからです。
とは言え、序の舞、真の序の舞が組み込まれている演目のテーマにより演者はそれぞれの舞の音楽性の空気感、(これを我々は位(くらい)と呼んでおりますが、)を共有しております。
長く伝承されて来た中で、不文律のこの位を身体に染み込ませる事こそが、演者の一生の課題となっております。

友枝雄人

2023年6月8日更新