開催終了 2016年8月27日(土) 14:00開演(13:00開場) 十四世喜多六平太記念能楽堂
五蘊会 二十周年記念公演
能「安宅」友枝雄人
なぜ義経一行は安宅の関を通過できたのであろうか。
関を守る富樫の何某は昨日も山伏を三人殺したという。
言語道断、それならば最後の勤めを始めようと言って一行は修験の秘訣を唱え数珠を押し揉むと、気圧された富樫は、次に、貴公ら南都東大寺建立のための勧進を目的とする旅ならば、勧進帳を読めと要求する。勧進帳があらばこそ、弁慶は笈(おい)の中から適当な巻物を取り出し、その場の作文を読み上げる。しかし、それは天にも響き、関の人々の肝を消すような声であった。
強力が義経とそっくりだと指摘され、一期の浮沈極まりぬと思われたそのときの弁慶の行動はさらに果敢であった。実力突破に走ろうとする郎等を抑え、主の義経をののしり金剛杖で打擲(ちょうちゃく)した。そして、強力の笈に眼をとめた富樫に、あなたは盗人か、と迫る。富樫をはじめ関の人々が一行を通したのは、その迫力に抗しがたかったからである。なおも富樫は先ほどの非礼を詫びかたがた酒をもって一行を追ってくる。弁慶が舞を舞っている最中も、いつ武力闘争になるか、全員気を許さない。関所を通過できたのは、男たちの唸りをあげるような力の結集のなしたことで、富樫の同情などではさらさらない。