NEW! 2025年9月6日(土) 13時開演(12時開場) 十四世喜多六平太記念能楽堂
2025年五蘊会 主催 合同会社GO-UN-NOH
友枝雄人「隅田川」
隅田川、「死の縁」と子方演出
隅田川ほど涙を誘う能はないと言われておりますが、今回は作中にある元雅の言葉「死の縁」に重きを置きたいと思います。
誰にも平等に訪れる死とそれを受け入れなければならない者、生きていくことの難しさ。息子を探し求める旅の途中でその死を無情にも伝えられた母親は、最後に子方の姿を一瞬見ることになりますが、それによって救われるのか、それともさらに絶望の谷に落ちるのか。お客様がこの場面に様々な思いを投影されていることは、私自身、子方を勤めていた子供の時分でも舞台上で感じておりました。
人買いに誘われ東国に下る旅の空で病に倒れた梅若丸は十二歳の少年で、今際の際の大人との会話は、かなりしっかりとしていることがワキの舟の中での語りから伺えます。しかし舞台ではあえて七、八歳の年齢の子方を出すことによってその演出の効果を高めています。
申楽談義の中に、作者の十郎元雅とその父親である世阿弥との間でその子方の必要性について意見が対立したことが伺えるそうですが、今回は世阿弥の考えた子方の姿を観客の皆様の感性に委ねさせていただき、子方を登場させない演出にて勤めさせていただきます。
「死の縁」を自分自身の生き様にも投影しつつ勤めてみたいと思っております。
ご高覧、お待ち申し上げております。
友枝雄人