2018年8月11日

觀ノ会「枕慈童」

今夏の猛暑、体力的にも精神的にもお辛い日々を過ごされていると思います。
残暑お見舞い申し上げます。

酷暑もお盆を過ぎれば秋の訪れを感じる事となります。待ち遠しい秋風でもありますが、そんな時節来たる9/24(月・祝)、秋の名曲「枕慈童」をセルリアンタワー能楽堂にて舞わさせていただきます。
觀ノ会、立ち上げ公演に出演させていただく事となり、企画にも参加させていただきました。

「枕慈童」は不老不死と菊の花を題材とした中国の魏の時代の話です。当然菊の花が舞台を飾るのですが、觀ノ会の方向性や立ち上げへの能に対する想いを意識すると、従来の喜多流のお花の演出だけでは物足りなさを感じておりました。
今回ご縁があり、花人である桐谷美香氏にお声掛けする事が出来ました。氏の花による舞台美術の総合演出は、「枕慈童」を選曲した理由をさらに深める事となりました。
一見不老不死は、寿ぎと考えられがちですし、この曲も祝言性を意識して演じられている事が多いです。しかしその詞章には、ただひたすら生きながらえる深い孤独感も謡いこまれています。
日本人が古来からこの不老不死を歓びと孤独との重なり合っているもの、二面性として捉えていた事に注目して、あえて二面を別けて舞う事に致しました。
能楽の世界とは別の世界でお花の活動をされていた桐谷氏の演出は、決して能楽の感性から逸脱するものでは全くありませんでした。むしろ我々能楽師、日本人の感性というのは本来根本が同じ所から始まっていた、という単純ながらとても大事な事実を再確認出来た、という所に至りました。

チラシの表紙、平安時代の蓮台に立った一輪の菊は、この企画のイメージだけではなく、実際の舞台にも使用されます。
桐谷氏の演出、氏の日本文化への深い理解が、菊の花々に昇華されて当日皆様をお迎えする事になります。ご期待頂きたいと思います。
別世界でいながら、同じ感性を持ち合う事が出来た舞台で舞う事の喜びを感じて、さらに当日に向けてお互いに切磋琢磨しております。
能楽愛好家、また初めて能舞台にお運びの方にもしっかり問いかける舞台です。
不老不死とは何か、事象の二面性とは?
終演後に思いを馳せていただける事となりましょう。

是非ご高覧下さいませ。

友枝雄人