2016年10月6日

安宅を勤めて

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撮影 石田裕

 

 

 

 

 

 

 

残暑が長いとはいえ、秋風を肌に感じる時期になりました。
ご報告遅くなりました。8月の終わりの五蘊会にての「安宅」の初演について報告させていただきます。
初演ではありましたが、いままで何度となく立衆の山伏として安宅の関は越えて参りました。しかしながら、自分が弁慶になるとそうやすやすと越えられる ものではないと実感しました。
勧進帳を読み上げる弁慶というと豪快なイメージがありますが、それは歌舞伎などの演出で作り上げられた人間像のような気がしています。能の安宅の弁慶は強さと同時に沈着冷静、危機に動じない胆力というものが必要だと稽古の段階から思っておりました。自分の目指す弁慶像には、なかなか近づけませんでしたが、仲間の力強い後押しにより何とか奥州に向かうことができました。
11月6日の友枝会では、これも演劇的要素の強い「国栖」を勤めさせていただきます。安宅と同様に歴史的事件を題材にした曲目です。「壬申の乱」をモチーフにしており、登場人物も多く展開の早い演目です。ともすると台本に流される演能となりがちでシテの力量が問われるところです。特にこの曲は力強さが根底に求められる喜多流らしい演目の一つと思っておりますので、心して舞台に臨みたいと思います。

友枝 雄人