開催終了 2022年7月17日(日) 午後2時開演(午後1時開場) 十四世喜多六平太記念能楽堂
友枝真也「野宮」山本則孝「昆布売」友枝昭世「山姥」
第九回洩花之能
洩花之能主催公演、第九回洩花之能は狂言「昆布売」と能「野宮」ご覧いただきます。「野宮」は源氏物語賢木(榊)の巻での光源氏と六条御息所の別れを晩秋の嵯峨野の景色の中、情緒深く描いた作品です。シテである六条御息所は「葵上」という曲では嫉妬のあまりに生霊となった怨霊として描かれているのに対し、こちらはその後日談として静かに描かれています。自らが怨霊となって葵上を呪い殺してしまったことに気づいた六条御息所は、都には居場所はなく自分の娘が斎宮となって伊勢に下るのに着いて行くことを決意します。そのための精進潔斎の場である嵯峨野の野宮に引き籠りますが、そこへ光源氏が晩秋の九月七日(長月七日)にやってきて別れを交わし、伊勢へ下る六条御息所へ歌を送るというのが賢木の巻の前半のあらすじです。
源氏物語「葵」の巻で生き霊となって現れるのが、六条御息所という文学史上最も際立ったキャラクターの動のピークだとしたら、この光源氏との別れのシーンが静のピークと言えましょう。
能「野宮」では九月七日に晩秋の嵯峨野の景色の風情を見にやってきた僧の前に一人の女性が現れ、ここは斎宮になるために精進潔斎をする場である野宮だから軽々しく立ち入ってはいけないと呼びかけます。そしてこの日と同じ日である長月七日の六条御息所と光源氏との邂逅の様子を語り、自らは六条御息所の霊であると明かして姿を消してしまいます。能の後半には在りし日の御息所の姿が現し、葵祭で光源氏の姿を見ようと車に乗っていたところ、葵上のお付きの人に受けた狼藉ゆえの自らの妄執を語り姿を消して行きます。
「野宮」は金春禅竹の作とされ、同じような曲趣の世阿弥作「井筒」と構成の上では非常に似ていますが、描く世界は「井筒」とは一味も二味も違う複雑な感情です。古典に精通していた禅竹の面目躍如たる作品で、所謂難解(退屈)な部類に入るお能かもしれませんが、その情緒深さを感じることができた時の感動は計り知れません。皆様のご来場をお待ちしております。
またこの公演に関するお問合せは、お電話の方は喜多能楽堂(℡03-3491-8813)、またはメールにて desk-shinya@tomoeda-kai.com までお願いいたします。
また6月3日(金)6月17日(金)7月1日(金)のいずれも午後18時よりそれぞれ1時間ほどzoomにて「野宮」鑑賞にあたって事前講座を開催いたします。洩花之能のチケットをお求めの方は¥1500にて、講座のみの方は¥3000にてご参加いただけます。講座では
1 「賢木」の巻の背景となる「葵」の巻、そして「葵」に取材した能「葵上」を取り上げ、六条御息所という女性像に迫る。
2 「賢木」の巻の文章と能「野宮」の詞章を読み込むことで「野宮」で描かれる六条御息所の心情に迫る。
3 「賢木」の巻に描かれたシーンと「野宮」で表現されるシーンの違いに焦点を当て、作者とされる金春禅竹の描きたかった世界を思いやる。
という3つを大きなテーマとして構成する予定です。皆様のご予約をお待ちしています。尚、この講座はWEB上に保存されるので講座終了後はいつでもオンライン上で視聴することができます。