隅田川詞章・伊勢物語九段
「隅田川」の詞章をアップします。喜多流の文言を元にワキ はワキ方宝生流に依っています。従って実際の演能とほぼ同じ詞章です。当日会場でもお配りする予定ですが、事前講座に参加される方は是非プリントアウトしてお手元に置かれることをお勧めします。ご存知の通り、「隅田川」は在原業平が厭世のあまり京を逃れ東国に下る伊勢物語九段を元にシテとワキとの問答が進んでいきます。ですので、この「隅田川」を観賞にあたってはこの伊勢物語を是非チェックしておきたいところです。ちょうど良いウェブサイトがありましたのでリンクを貼っておきます。
https://ise-monogatari.hix05.com/1/ise009.azuma.html
この第九段は伊勢物語の中ではどちらかというと長い段で、三河国八橋→駿河国宇津の山→富士山→そして隅田川(その各地で一首ずつ場所に因んだ歌を詠みます)、と隅田川はこの段の最後、つまり京都からは遥か遠くの東の果てという登場の仕方をします。また、この「東下り」は後の文学に大きな影響を与えています。西行が鎌倉へ下って数々の歌を詠んだこと、その西行に影響を受けた芭蕉が奥の細道という紀行文を成したことが代表的なものです。謡曲にも「杜若」の他に「賀茂物狂」や「盛久」に東下り(「海道下り」とも)の段があります。
7月12日の事前講座ではこうした原典と狂女物との関係、また世阿弥は作らなかった人間のドラマ性について解説いたします。是非ご参加お待ちしています。
友枝 真也